オカシな戦い。



「あのう...沖田先生、本当にするんですか?」
心の奥底から嫌がりながら、セイは総司を見上げる。
その顔をしっかりと見ているのに、総司は気にする様子もなくにこにこしている。
「もちろんですよ!あ〜本当に楽しみですね。」
はあ...セイの大きなため息を物ともせず、総司は半ば強制的にセイを引っ張っていった。


事の起こりは2日前。
新選組の隊士達は会津藩の容保公から活躍振りの褒美として1人3両ずつ与えられた。
突然まい込んで来たお金に、隊士達はもちろん大喜び。
左之、新八、平助の3人はいつものごとく、女を買いに行こうとした。けれど...
「ちょっと、そこの3人、待ってください。」
「あれ、どうしたの総司?」
ウキウキとしている2人の変わりに平助が答える。
「いえね、今回配られたお金、他の事に使いませんか?」
「他の事だ〜!?女を買うより良い事があるか!!」
総司の意見にもちろん左之は暴れまくって大反対。
そんな左之をおさえつつ、新八は総司に尋ねた。
「いったいどんな勝負をするんだ?」
「ふふ、それはまだ秘密です。ただし1人賭けるお金は1両。そしてそのお金は全て優勝者にいくのです。
多分参加者はあなた達を含めて6人になると思いますから....
「ってことは優勝者には6両か!?」
暴れているのを止めて、左之は総司に聞いた。
「ええ、まあ...そういうことになりますね。」
左之を含めた3人が喜ぶのはもちろんの事。
なんせ、今回もらったお金が倍になるのだ。
「どうですか〜、やります?」
「「おう!!」」
その場にいた3人はつい倍のお金というのにつられて、どんな勝負をするのかわからないのに約束をしてしまった。

同時刻...。
「あっ、斎藤先生!!」
元気で明るい声が斎藤を呼ぶ。
自分を呼ぶその声に嬉しさを感じながら斎藤は振り向いた。
振り向いた先には想像してた通り、ニコニコと可愛い顔をしたセイが立っていた。
「何だ、神谷?」
「あのう、2日後空いてますか?」
「ああ...空いてるが、何か?」
自分の予定を聞かれているというだけなのに、斎藤の胸の鼓動は早くなる。
しかし、想像通りにいかないのもまた運命。
「本当ですか?実は沖田先生がみんなで1両かけて勝負しようって言い出したんです。」
(また沖田さんがらみか....)
少しキレた斎藤一....。
「ですから、是非とも斎藤先生に参加して欲しいなって...だめですか?」
潤んだ大きな目で見つめられて斎藤の怒りはどこかへ吹き飛んだ。
「もっ、もちろんいいぞ!」
「えっ、いいんですか?ヤッタ〜!!では沖田先生に報告してきま〜す。」
笑顔でかけていくセイの姿に、斎藤は心底可愛いと思い見つめていた。
そう、つまりはこっちの斎藤もどんな勝負をするのか知らないのであった。

セイはどんな勝負をするのか聞き出したので嫌がっていたのだ。
しかし時はすでに遅し、2人は4人の待っている鍵善に着いた。
「おっ、来た来た総司。いったいどこでどんな勝負をするんだ?」
「どこでって..嫌ですね〜、ここに決まってるじゃないですか!!」
左之の質問に総司はニコニコと答える。
嫌な予感がして、新八が総司に聞いた。
「ここで何の勝負をするんだ?」
「本当に何いってんですか〜。鍵善といえば葛切りでしょう?葛切り大食い勝負ですよ〜vv」
「な〜に〜!!!!」
声をそろえて驚く4人に、ほらみろと言う顔をしてセイは総司を見た。
「そんなの総司の勝ちに決まってるじゃないか!!」
「全くだ、俺は降りさせてもらう。」
「総司の考えに付き合っちゃらんね〜な。」
「本当ですよ、沖田先生。」
5人はぞろぞろと帰ろうとしていた。
「...1度受けた約束を簡単に破ってしまうなんて武士の恥ですよ。」
その言葉に5人の動きが止まる。
「さあ、皆さん、席に着いて。始めますよ〜。」
結局5人は勝負をしてしまうのだった。

「ふう、おいしいですね〜...あれ、みなさんもう終わりですか?」
大食いの左之ですら必死に12杯を食べていたというのに、総司はぺろりと15杯を食べてしまっている。
「でも、勝負は勝負ですからね!この6両は私のもので〜す。」
総司の圧倒的な勝利で葛切り大食い勝負は幕を閉じたのであった。

「なんだ〜!!また厠は人が入ってるのか?」
土方歳三、実は用を足せないでいた。こちらも可愛そうな被害者である。
そう、昨日の1件で腹を壊した5人がひっきりなしに厠に入っていくからである。
「だらしがないですね〜皆さん。たったあれくらいで。」
(たったあれくらいだと〜!!!!)
5人は皆そうおもった。
「ところで神谷さん!」
顔の青白いセイの肩を総司はポンッと叩いた。
「明日また葛切り食べに行きませんか〜、もちろんおごりますよこの6両で!!」
にこにことした総司の顔は今はセイにとっては鬼のような顔にしか見えなかった。
(いっ、いくら沖田先生と出掛けるからって、それだけは御免です〜!!)
そう思いながらも惚れた弱み、結局セイは総司についていくのであった。
(神谷じゃなくて良かった〜...)
誰しもにそう思わせたオカシな勝負であった。


------完-------


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あやのんのサイトの1000HIT記念企画で、こんな素敵な作品を頂いちゃいました〜vv
もー、最初読ませて頂いた時、思わず笑ってしまいましたよ♪
さすが甘味王!総ちゃんやってくれますねー!!(笑)
「たったあれくらい」ってアンタ!!(笑)5人に加え私も思いました(笑)
惚れた相手にはカラキシ弱い斎藤さんとセイちゃんの2人も可愛いですv
あやのさんどうも有り難うございました〜vv





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